2021年8月21日土曜日

ヤタガラスの掲げる「正義」は隣国を苦しめるものだ! そしてライドウには、「自分は隣国から見れば敵なのだ」という自覚を持たせるべきだ!

ヤタガラスの掲げる正義は隣国を苦しめるものだった…


日本のRPGにおいては「正義の味方の主人公が悪を倒す」という「勧善懲悪」ものが主流である。スクウェア・エニックスから発売されている代表的な日本のRPG『ドラゴンクエスト(DragonQuest)』『ファイナルファンタジー(FINAL FANTASY)』にしても基本はそうだ。
『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団(Devil Summoner: Raidou Kuzunoha vs.the Soulless Army)』(プレイステーション2。以下『超力兵団(Soulless Army)』)も、結局のところは「天皇守護組織・超國家機関ヤタガラス(以下ヤタガラス)に仕える正義の味方であるライドウ(Raidou)が、帝都に仇名す者を倒して平和を取り戻す勧善懲悪もの」であるが、問題はこのゲームにおける「正義」が、実は「日本の隣国を苦しめるもの」だという事実である。

ライドウには、「隣国から見れば自分は敵だ」という自覚を持たせるべき

このゲームの時代は1931年(元号は架空の「大正二十年」となっている)だが、この頃の大日本帝国は「八紘一宇達成のために」韓国や台湾を植民地支配していた。八紘一宇とは平たく言えば「天皇の名の下に全世界を一つの『家』として治める」こと。
そう考えれば、ヤタガラスに仕えるライドウは「日本から見れば帝都を護る正義の味方」であっても、韓国や台湾から見れば「八紘一宇の名の下に我が国を踏みにじる敵」となるのは明白であろう。しかしゲーム上ではそのような描写は一切出てこない。ラスボスの一人「伽耶に憑きし者」でさえもそのようなことは口にしない。
このような描写を入れると、「日本は隣国を侵略などしていない」と歴史を捏造する右翼やバカウヨに抗議されたり、隣国を苦しめている罪悪感からゲームを続けることが出来なくなるプレイヤーも出てくるかも知れないから、あえて描かなかったのか。しかし、私としてはライドウに「自分は日本では正義の味方でも、隣国の人が見れば敵だったのだ」という自覚を持たせるような展開を入れるべきだったと考えている。
例えば、在日韓国人(朝鮮人)の住人と帝都のどこかで出会って、「私の祖国は今、天皇の名の下に日本に支配されている…、あなたはどう思うか?」と言われるとか、ライドウの正体が「天皇守護組織に仕えるデビルサマナー」だと知っている在日韓国人から「天皇守護組織のために働く貴方も、隣国の植民地支配に加担しているのだよ…」と言われる、など。
このゲームの原点と言える『真・女神転生(Shin Megami Tensei)』(スーパーファミコン他)では必ずしも「ロウ(Law)」サイドが善、「カオス(chaos)」サイドが悪とは決まっておらず、プレイヤーが決めることであるが、なぜこの『超力兵団(Soulless Army)』ではプレイヤー自身が「何が正義か」を判断することが出来ないのか…。多分、天皇守護のヤタガラスに逆らえるような展開も入れると、天皇崇拝の右翼から襲撃されるとでも思ったのだろう。