2021年7月22日木曜日

「戦前回帰」するきな臭い今の日本には相応しくないゲームなのだから…

今の日本は「新たな戦前」なのかも知れない…

まず最初に言うが、何度も書いたように私は『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団(Devil Summoner: Raidou Kuzunoha vs. the Soulless Army)』(プレイステーション2。発売元・アトラス。以下『超力兵団(Soulless Army)』)の大ファンであり、主人公・ライドウ(Raidou)が大好きだが、しかし『葛葉ライドウ(Raidou Kuzunoha)』シリーズの復活には一切反対する。その理由は今までたくさん書いたが、今まではあまり書かなかった別の理由もあるので今回はそれについて。
今の日本は、時代の空気に敏感な者なら「何だかきな臭い感じがする」と分かるのではないか。改憲問題や歴史修正主義の蔓延、領土問題、嫌韓・嫌中思想の蔓延、北朝鮮への敵意など、戦前日本のようなきな臭い空気が感じられる(鈍感な人間には分からないだろうが…)。そう、まるで「新たなる戦前」のような空気。

『超力兵団(Soulless Army)』はそもそも「きな臭いゲーム」だからさ…

今まで何度も書いたが、おさらいしておくと『超力兵団(Soulless Army)』はこういう内容のRPGである。

1931年の大日本帝国(史実とは異なり「大正二十年」となっている。史実では「昭和六年」)を舞台とする『メガテン』(『女神転生(Megami Tensei)』)シリーズの一種であり、シリーズ中では異端。主人公のデビルサマナー・葛葉ライドウが、天皇(ゲーム上では大正天皇)と日本(国体)を守護する「超國家機関ヤタガラス」(国家神道がモデル。思想は極右としか思えない。以下ヤタガラス)の命令で「帝都」(東京)を守護する話。敵対するのは、日本を破壊しようとする「天皇にまつろわぬ者」たち(中には日本軍の軍人も居る!)であり、第七話ではヤタガラスに命じられ、危機に陥った天皇(としか思えない人物)を救わなければならない。最終ボスは「伽耶」(古代韓国っぽい名前)という少女と戦艦(実はロボットに変形する!)。

この内容を見るだけでも(パッケージイラストを見ても何となく分かるだろうが)「このゲームは何かきな臭い感じ、右翼臭、ナショナリズム臭、ミリタリー臭がする」と思うのではないか? 戦前日本を舞台にするとある程度そうなってしまうのは分かるが(人気の『鬼滅の刃(Demon Slayer)』も時代背景的には似ているけど…)、それだけでは無くやたらと旧日本軍軍人や軍用施設が出てきたり、戦艦が出てくる点、天皇守護組織を味方とし天皇と大日本帝国を護る点などもまたきな臭さを倍増させる。

きな臭い世の中で再び世に問うと警戒されるのは当然なので…

私がライドウのファンでありながらも復活には断固として反対するのは、時代の空気を敏感に読み取れてしまうからだろう。このきな臭い、戦前回帰したような空気。こんな時代に『超力兵団(Soulless Army)』のような、いかにもミリタリー色、右翼色の強いゲームを再び世に出せば、メガテニスト及びゲームファン、その他一般人から警戒されるのは当然だと思わないか? 人によっては「むしろ今の時代に合っているから出すべき」と言うかも知れないが、そう言うのは多分右翼っぽい人だけだろう。なお続編の『デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王(Devil Summoner 2: Raidou Kuzunoha vs. King Abaddon)』(プレイステーション2)についてはその「きな臭さ」はだいぶ無くなっているが(とは言え時代は1931年のままだし…)、こちらについても復活は希望しない。結局、天皇守護の「ヤタガラス」が味方であることに変わりは無い限りは、「このシリーズは天皇崇拝を称賛しており、その結果として日本がやった戦争や植民地支配を正当化している(さらに「天皇制がもたらす差別」も容認する)ようにしか見えない」のだから。なお、続編においてきな臭さが随分和らいでいるのは、前作に批判があったからではないか、と考えている。
新作? それももちろん希望しない(そもそも開発チームは既に解散済みとのことで、今更作る気は無さそうだが)。もし今の時代に、若いスタッフによってこの『ライドウ(Raidou)』シリーズを作ると、その「きな臭さ」はますます倍増しそうだから。今の若い人の中には歴史修正主義、嫌韓・嫌中に毒されている人も居るだろうし、そういう人がこのシリーズを作るとなると危険だ…。
まあ、あからさまな差別表現(例えば「ライドウが中国人・韓国人を倒しに行く話」など)はゲーム倫理上不可だし、アトラスとセガ(親会社)も「差別は許さない」という企業理念は恐らくあるだろうし、「差別制度である天皇制を美化したり、歴史修正主義や嫌韓・嫌中を煽りかねないゲームはもう出すわけには行かない」と思ってくれると信じているのだけどね。