2020年11月8日日曜日

「極悪人の昭和天皇」の父を救えというのか?

 『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団』の第七話について

『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団』(プレイステーション2)の第七話は、「大正天皇(としか思えない人物)にかけられた呪いを解くために敵を倒せ、そうしなければ許さん」と、味方の組織「超國家機関ヤタガラス」に命じられる話である。
この話には多くの問題がある。その一部はこういうことだ。

第七話の何が問題であるか

大正天皇は、昭和天皇の父である。
一般的に日本では、昭和天皇は「暴走した日本軍に騙されて戦争を始めただけだから戦争責任は無い」とか、「聖断によって戦争を終わらせた」などと思われている節があるが、それは捏造である。
昭和天皇は戦犯だと思っている。無謀な戦争を始めることを選び、原爆が落ちるまで戦争を止めようとはしなかったから。そして戦後、戦争責任を取ろうとはしなかった。東京裁判でも、アメリカの策略で「あえて」罷免された。
そういう視点を持つ人にとっては、第七話は許しがたい話だ。この話を見ると、「極悪人としか思えない昭和天皇の父を救い、天皇家を存続させていずれ戦争が起こるのを黙って見ていろと言うのか? そんなこと出来るか!」と反発するのは確実ではないか? そのことを考えずに作ったのだとしたら、非常に良くない。
結局、この話は「昭和天皇には戦争責任は無い」と考える人に向けて作ったものだとしか思えない。それが問題である。そういう風に考える日本人が多数派だとしても、少数派を切り捨てるべきではなかった。また、日本には在日韓国人・在日中国人が居ることも考慮するべきである。

2020年9月13日日曜日

このゲームの問題点・其の壱

 『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団』とは

このブログで扱うゲーム『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団』(プレイステーション2。以下『超力兵団』)について簡単な説明をしたい。

『超力兵団』とは、アトラス社が2006年に発売したRPG(戦闘シーンのみアクション要素あり)。『女神転生』(『メガテン』)シリーズの一種。対象年齢は15歳以上であり、「暴力やグロテスクな表現を含む」(主に戦闘シーンの流血描写)ので注意が必要。

『超力兵団』の舞台は1931年の大日本帝国の中心・帝都(東京)であるが、このゲームでは「大正20年」[*1]という架空の元号になっている。つまり、「大正天皇が1931年でも存命である」設定だ。

主人公は、「デビルサマナー」の少年・葛葉ライドウ。デビルサマナーとは「悪魔」を「仲魔」(味方)にして共に戦うことが出来る職業のこと。「悪魔合体」という、『メガテン』特有のシステムも搭載されている。

このゲームは、私は今でも時々プレイするし、主人公のライドウは好きであるが、様々な問題点を抱えている。
今回は、その問題点のうち一つを書いておこう。

「天皇崇拝組織が味方で、逆らう者を倒す」のは問題

まず「基本的な設定とストーリー自体が問題」だと思っている。

これが設定とあらすじ。

「『超國家機関ヤタガラス』(以下ヤタガラス)なる、『天皇を守護する組織』に仕える主人公・葛葉ライドウが、帝都破滅の危機を救うために、敵である『天皇にまつろわぬ者たち』を倒していく」

ヤタガラスとは「古代から日本を霊的な力で陰で守護し、支配する組織」だというが、その実態は謎とされる。だが、これはかつて存在した国教である「国家神道」をモデルにしていると考えていいだろう。『超力兵団』の第七話では、ヤタガラスがライドウに対して「大正天皇[*2]を救え」(救わなければ先には進めない)と命じるところからすれば、「天皇を現人神として信仰している」ことは安易に予測出来るから。

そのヤタガラスを味方にするとは、何を意味するか。それは、「天皇制が持つ差別性に気づかぬまま、あらゆる差別に加担してしまう」ことだと考えている。
そもそも天皇制とは「身分差別制度」であるのだが(他の差別も含まれる)、それを意識することの無い人が日本には多いのも実情なのか…。皇室ファンも多いし。
だが、例え日本がそんな実情としても、「天皇制は差別制度だから廃止せよ」、「昭和天皇は戦犯だ」(大正天皇は昭和天皇の父である)と常々思う人…、つまり「天皇にまつろわぬ人」は現実に居るわけだし、そういった人がこの『超力兵団』をプレイする可能性があることも考えずに、このような設定・ストーリーを作ったことは非常に問題があると、私は考えている。

参照ゲームソフト

  • デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団(プレイステーション2/発売元・アトラス)

参考文献

  • デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式ふぁんぶっく(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)
  • デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式完全本(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)

[*1]史実では昭和六年
[*2]「天皇」とははっきりとは言っていないが、明らかに大正天皇だと分かる