2021年6月7日月曜日

宗像とスクナヒコナは鳴海たちに「加害者であること」を自覚させようとしたのに…

前回記事をさらに掘り下げる

前回のこの記事。


これについて、もう少し掘り下げてみたい。

宗像とスクナヒコナのセリフ

『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団』(プレイステーション2)の第伍話の敵将・宗像のセリフの一部を再録する。

宗像「やはり来たか、葛葉ライドウ。海軍…いや国家に利用されし愚かなデビルサマナー。
ライドウよ、お前は知りながら従っているのか? ヤタガラス…、いや、この国家が我らに行なった行為を…。
かつて…、そう遥か古の時代、天より降り立ったという者がいた。その者は己こそ大和の地の支配者と呼び、その地に住む民を征服し始めた。頭を垂れる者を従え…、反抗する者を討ち果たし…、大地を血で染めて作り上げたのがこの日本という国なのだ。(後略)」

第拾話で、宗像の肉体は実は「スクナヒコナ」という国津神に乗っ取られていたことが判明する。スクナヒコナと、主人公・ライドウの仲間である探偵・鳴海とのやり取りの一部を再録する。

スクナヒコナ「帝都百万の民の死滅…、それが超力超神に与えし命。全ての民が罪を噛締(かみし)めながら、悶え、そして死ぬのだ!」
鳴海「…馬鹿な、何千年もの昔の恨みなんて、今の俺たちには関係ねぇだろ!」
スクナヒコナ「ヤツらの末裔である事…、産まれ落ちた事が罪なのだ!」
鳴海「そんなムチャな…」
スクナヒコナ「貴様らにはわかるまい。虐(しいた)げられし者の心なぞ…。帝都破壊の前に、貴様らを血祭りに上げてくれる!」

「侵略戦争の加害者」であることを鳴海たちに自覚させようとした…

前回書いたように、宗像とスクナヒコナのセリフは「日本の侵略により日本化された琉球と蝦夷、そして日本の植民地にされた韓国や台湾の人々」の恨みの言葉に見えるわけだが、さらにもう一つ付け加えると、スクナヒコナの「ヤツらの末裔である事…、産まれ落ちた事が罪なのだ!」は、「鳴海やライドウに、『貴様ら大和民は侵略の加害者の末裔だ』ということを自覚させようとしたもの」でもあると思っている。だが結局、鳴海はそれを自覚出来ないので「…馬鹿な、何千年もの昔の恨みなんて、今の俺たちには関係ねぇだろ!」と突き放してしまったのだろう。
さらに言うと、宗像とスクナヒコナのセリフは、実は「戦争の歴史を知らずに生きる現代日本人に対する警告」なのだろうと思っている。宗像の「その者は己こそ大和の地の支配者と呼び、その地に住む民を征服し始めた。頭を垂れる者を従え…、反抗する者を討ち果たし…、大地を血で染めて作り上げたのがこの日本という国なのだ」は、「この日本国は、かつて侵略戦争と植民地支配で韓国人や中国人たちを散々痛めつけてきた戦犯らによって作り上げられた血塗られた国なのだ」という意味とも読めるからだ。スクナヒコナの「ヤツらの末裔である事…、産まれ落ちた事が罪なのだ!」も、「日本人として生まれた以上、祖先の犯した戦争犯罪・植民地支配責任から逃れることは決して出来ない」と言っているように見える。
鳴海は、一般的な現代日本人像(または右翼化した日本人)を投影したものだと私は思っている。つまり、韓国人などから「日本人は戦犯の子孫だ」と言われると耐えられなくなって現実逃避してしまう(歴史修正主義に走ってしまう)日本人そのもの。だからこそ「昔のことは俺たちには関係無いことだ、日本に生まれただけで罪だなんてムチャなこと言うな」といったセリフを言えるのだろう。そして前回も述べたように、鳴海の姿は「侵略者の子孫であることを自覚出来ない製作者」そのものだとも思えるのだ。

参照ゲームソフト

  • デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団(プレイステーション2/発売元・アトラス)

参考文献

  • デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式ふぁんぶっく(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)
  • デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式完全本(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)